なぜ ”今“ ブラジルなのか?

昨年末以降、『過度な円高』が為替市場において修正されてきた日本円。
この円安の流れは、対ドル・ユ−ロ等の主要通貨だけでなく、新興国通貨への投資の主軸として取り上げられてきた、いわゆるBRICs諸国(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)通貨に対しても同様の状況となっています。

本欄では、リ−マンショック直後の資金逃避から一旦大幅に下落し、その後2009〜2011年頃にかけ、債券・投資信託などへの投資を経由し、日本でも投資熱の高くなったブラジル・レアルについて、今後の展望を探るべく、現状の経済・為替市場動向についてご案内します。

ブラジルの基礎的経済構造

皆様が「ブラジル」という国名を耳にした時、どのような(投資先としての)イメ−ジをお持ちになるでしょうか?恐らく、多くの方が「鉄鉱石を中心とした資源国・コ−ヒ−豆等の農業国」といった印象を持たれるのではないでしょうか。 又、実際に投資をしておられる方の中には、「航空機製造大手のエンブラエル社」「(エタノ−ル燃料走行可能な)フレックス自動車生産国」といった工業国としての側面もご存知かもしれません。

ブラジルのセクター別GDPこれらは世界貿易の中における輸出入品目別の金額シェアにおいて、ブラジルがトップ、ないし上位に位置するものが多いことや、生産・産出量においても無視できない規模にあることが一つの要因と言えるでしょう。

一方、総括的に各国の経済力の比較を行なう上での指標としてよく使われるGDPについて同国を俯瞰すると、名目GDPの額において世界6位にくい込み、しかもその7割強を第3次産業分野が占めている、ということは日本の投資家にとっては、あまりなじみのない話ではないでしょうか。

ちなみに、同じくBRICs諸国と並び称される国の中でも、総人口が約13億人の中国・約12億人のインドと、約2億人のブラジル、約1.4億人のロシアを比較すると、前者と後者の間で「1人あたりのGDP」については歴然とした差が存在することにお気づき頂けると思います。(人口概算は2011年度IMF推計値より引用)

さらに、ブラジルのセクター別GDPと合わせてご覧頂くと、ブラジルの経済成長において「内需」がすくなからぬ影響力を持つことについては容易にご想像いただけるでしょう。

リーマンショック以降の経済動向

バックグラウンド

ブラジルの経済成長については、リ−マンショックによる世界景気減速の余波を受け、2009年度にはGDP成長がマイナス圏に落ち込みました。これは、同国にとって最大の輸出相手国となる米国・中国の景気減速の余波を大きく受け、輸出額・及び資本投資流入の落ち込みが甚大であったことに起因します。
又、2010年度には、09年のマイナス成長の反動もあって高成長となったものの、その後の欧州債務問題・財政 危機等の影響をうけ、経済成長は同国の有する潜在力のレベルにまで回復したとは言い切れない状況です。 しかし、一貫して堅調に推移する個人消費が景気を下支えしているといった状況下にあります。又、個人消費の原動力となる雇用情勢についても、一貫して失業率の低下が進んでいるほか、ルセフ政権下での減税策などが功を奏しており、大きく崩れることは予想し難いところです。

主要都市圏における平均失業率と実質平均月収

現状の主要な課題と対策

2009年以降、米欧における金融緩和ならびに高金利国通貨とされたレアルへの資金流入等の要因によって、2011年には対ドルで1レアル=1.6米ドルを超えるレアル高となりましたが、「通貨戦争」として極度のレアル高を牽制するマンデガ財務相らの指揮の元、IOF課税(金融取引税)の強化・経済減速に対応するためのSelic金利(政策金利)引下げ・及び投資資金の流出などによってレアル高は特に対ドルにて修正され、2012年度後半は1レアル=2.0-2.1ドル近辺で推移して来ました。

ブラジル基本金利の動き 現状のブラジルの金融政策としては、過度の為替変動を抑えつつ、若干のレアル高を容認する素地を固めつつある、といった状況にあります。一昨年のようなレアル高となった場合、経済成長を従来の軌道に乗せたいブラジルとしては、輸出を行なう上での価格競争力をさらに低下させることになるため、これは阻止したいところですが、一方で足元では旺盛な国内消費と較べ、外需を取り込めていないことから輸入超過(2013年1月単月)の状況にあり、レアル安が進めば輸入物価高騰によるインフレが加速し、国内消費をも減速させかねない点が懸念されています。

そのため、ブラジル中央銀行では、為替市場に大きく影響を与えかねない政策金利については、これまでの引下げの効果を見極めるために据え置くというスタンスを変えにくい状況にあります。一方で、世界景気の回復という外部要因の改善を座して待つ事も出来ない政府としては、A.輸入税の引き上げB.民間金融機関に対する個人向融資金利の引下要請C.従業員給与や設備投資に対する減税措置D.電力料金の引下 と言った国内景気刺激策を取る他、民間銀行の預金準備率を引下げる(≒市中への資金供給拡大)などの対策を矢継ぎ早に出しています。

今後の展望

ブラジル貸出金利の推移現在の世界景気については、欧州を中心とした金融危機の悪影響から完全には脱したとは言いがたい状況にあります。又、火元となった欧州自体において、痛みを伴う財政再建に主軸をおくところから昨年の仏大統領選以降、景気刺激を重視する方針に移りつつあることが、今後の財政・債務問題の収束にどのような影響を及ぼすのかなど、不確定要素が少なくありません。 一方ブラジルの国家財政を見る上で、先進国と比較して健全性の高い公的債務残高/対GDP比率及び対外債権収支のほか、高位で安定している外貨準備高などは安心感がある他、これまで引下げられてきたとはいえ世界的に見てなお高い水準にある政策金利などは、投資対象国として高い魅力を持つと言えるでしょう。

ブラジル貸出金利の推移
一方、今後同国通貨への投資損益に大きく影響を及ぼす、通貨レアルの動向については、世界景気の復調、及び 金融不安の更なる後退等によって、金融当局によるレアル高への牽制の緩和・政策金利の上昇があれば、更なるレアル高を期待できる状況とはなっています。又、投資資金を国外から呼び込むため、「ブラジル・コスト」とも呼ばれる複雑な税制や労働・雇用面での過剰な保護措置をはじめとする抜本的な改革をルセフ政権において推進することが望まれてもいます。

今後の投資スタンスについて

日本国内を見ると、昨年来の自民党政権への交代・経済政策等への期待から円安・株高といった状況が目を引きますが、 昨年9月の米国におけるQE3発動の効果・欧州財政問題に対する懸念の後退もあってか、世界的にも株価の上昇が続いており、ある程度は世界景気の復調を期待してもよさそうです。一方、欧州問題が再燃した際には負の要素が当然発生することにもなります。

これらの点を踏まえた上で、投資をご検討されてみてはいかがでしょうか。

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参考為替レート
※留意事項
参考為替レートは各国中央銀行公表の定点における為替レートであり、実勢レートとは異なり、乖離している場合がありますのでご注意ください。

出所:各国中央銀行
※2025/05/09 8時50分時点


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