トルコ・リラを取り巻く環境(2021年4月)
トルコ中央銀行は4月15日、主要政策金利である1週間レポレートを19.00%で据え置くことを発表しました。 中銀の前総裁はエルドアン大統領に事実上更迭されただけに、政治の意に沿う金融政策になるかに注目が集まっていました。 3月のインフレ率は前年同月比+16.19%と高止まりしていたこともありますが、結果として、エルドアン大統領と金融市場のどちらにも与みさないとの意思を示したことで、ひとまずは中銀の独立性を巡る懸念を打ち消すこととなりました。 ただし、今後インフレ率は緩やかな低下傾向をたどる可能性(図@)が高く、持続的な物価安定の浸透過程で数か月程度の低下傾向を確認しただけで再び中銀が金融緩和に踏み切ることも予想されるため、引き続き金融政策は注視する必要があります。
トルコ・リラは、しばらくの間は神経質な展開が予想されますが、以下に記したファンダメンタルズがトルコ・リラを下支えすると考えられます。
- トルコの主要産業である観光業が新型コロナウイルスで大打撃を受けたにもかかわらず、製造業が 2020年後半に急回復したことで2020年のGDP成長率は1.8%とプラス成長を維持。なお、2020年にプラス成長できたG20の主要国は中国とトルコの2カ国のみ(図A)であり、潜在的な経済ポテンシャルが大きいことを示したといえます。
- トルコは、ドイツとほぼ同規模となる8,300万人の人口を有しているだけでなく、若年層の人口比率(平均年齢32.7歳)が高く、労働人口の増加による経済規模の拡大が期待できます。
- 欧州向け輸出拠点としての優位性(EUとの関税同盟、地理的な近さ、賃金の安さ)等の成長ポテンシャルを有しています。特に最大の輸出品である自動車ではトヨタ、ルノー、フォード、フィアットなどの大手自動車メーカーが、トルコ国内にトルコの財閥と合弁で工場を持っていることから欧州向け自動車輸出が盛んです。
インフレ率と対米ドル為替騰落率[図1]

出所:トルコ統計局
注)為替騰落率の点線は4月20日の為替レートでその後も
為替が変動しないと仮定した場合。(予想値ではない)
注)為替騰落率の点線は4月20日の為替レートでその後も
為替が変動しないと仮定した場合。(予想値ではない)
2020年 GDP成長率[図2]

出所:各国統計局が発表した内容をもとに作成