ブラジル・レアルを取り巻く環境(2021年6月)
今年に入り、ブラジル・レアルは3月上旬に1レアル=18円50銭台まで下落しましたが、その後は、原油などの資源価格の上昇やブラジルの主要輸出相手国である中国の景気回復、また、ブラジル国内の景気回復、中央銀行による利上げなどが好感されたことにより、目下、ブラジル・レアルは上昇基調となっています。
6月18日9時現在、1レアル=22円00銭台で約1年ぶりの高値圏まで上昇しています。
今後は、国内の経済・財政改革の進展に注目が集まります。
2020年のブラジルGDPは前年比▲4.1%でしたが、他の主要新興国に比べて下げ幅が少なかった要因として、コロナ対応として実施した低所得者や失業者向けの現金給付策が挙げられます。一方、この支援策の結果、2020年末の政府債務残高が前年比約18%増と急増しており、通貨の安定を図るためには財政の健全化に取り組む必要があります。
ブラジルのボルソナロ大統領は、新型コロナの感染拡大により中断するまでは、年金支給の抑制を狙った年金改革法案の成立や国営企業の民営化などの様々な改革に取り組んでいました。来年秋には大統領選挙が予定されていることからその前年にあたる2021年は改革を推進する重要な年となるかもしれません。
ブラジル・レアルは財政面において上値が抑制されやすい傾向がありますが、以下に記したファンダメンタルズがブラジル・レアルを下支えすると考えられます。
- ブラジル中央銀行は、景気回復に伴うインフレ率の上昇を受けて金融正常化に向けて舵を切っており、今年3月に約6年ぶりに政策金利を引き上げました。6月の会合では3会合連続となる0.75%の利上げ(今年に入ってからの利上げ幅は2.25%)を決定し、 8月3日に予定されている金融政策決定会合でも追加利上げが予定されています。海外との金利差がブラジル・レアルを下支えすると考えられます。
- 6月1日に発表されたブラジルの2021年1-3月期の実質GDPは、事前の市場予想を上回る前期比+1.2%となり、新型コロナウイルス問題が発生する直前(2019年10-12月期)の水準付近まで回復しました。 新型コロナウイルスの感染者が世界で3番目に多いにも関わらず、ブラジル国内の消費意欲はその影響をあまり受けず、景気は底堅い回復を示しています。
- ブラジルは資源大国であり、原油の生産量は世界7位(2020年)、鉄鉱石の生産量は世界2位(2018年)。資源高の恩恵を受けやすい反面、資源価格の動向に経済が左右される体質ですが、先進国を中心としたワクチン接種開始による経済活動の回復期待などもあり、資源価格は堅調に推移すると考えられています。
ブラジル実質GDP推移
(2016年第1四半期を100として指数化)

ブラジル政策金利・CPI推移
