トルコ・リラを取り巻く環境(2021年8月)
トルコ中央銀行は8月12日、主要政策金利である1週間レポレートは19.00%に据え置くことを発表しました。据え置きは5ヶ月連続となります。
エルドアン大統領はかねてから低金利を志向していますが、据え置きとなったのは8月3日に発表された7月のインフレ率が前年同月比+18.95%であったことで、政策金利からインフレ率を差し引いた実質金利がほぼゼロまで接近したことにあります。
金融政策決定会合終了後の声明文でも、「インフレ率が持続的に低下するまで、政策金利は引き続きインフレ率を上回る水準に設定する」と表明しており、インフレの落ち着きが確認されるまでの間は金融引き締め姿勢が継続する公算が高いと思われます。 なお、来月の金融政策決定会合は9月23日に予定されています。
トルコ・リラを取り巻く環境においては、引き続き主に次のようなリスク要因があると考えられ、注視する必要があります。
- エルドアン大統領による国内景気重視の利下げ志向
- 変異株による世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済への影響
- エネルギー輸入依存度の高さ
- 米国を中心とした対外関係
一方で、以下に記したファンダメンタルズがトルコ・リラを下支えすると考えられます。
- トルコは潜在的な経済ポテンシャルが大きいこと。(2020年はコロナ渦であったにも関わらず、通期でプラス成長ができたのはG20の主要国では中国とトルコの2カ国のみ[図1]。)
- トルコは8,300万人の人口を有しているだけでなく、若年層の人口比率(平均年齢32.7歳)が高く、労働人口の増加による経済規模の拡大が期待できること。
- トルコは欧州向け輸出拠点としての優位性(EUとの関税同盟、地理的な近さ、賃金の安さ)等の成長ポテンシャルを有していること。(特に最大の輸出品である自動車は欧州向けへの輸出が旺盛。)
2020年 GDP成長率[図1]

出所:各国統計局が発表した内容をもとに作成