ブラジル・レアルを取り巻く環境(2022年8月)
2022年に入りブラジル・レアルは4月下旬までは堅調に推移しました。
ブラジルは世界屈指の資源輸出国であることから資源価格の上昇や、ブラジル中央銀行による利上げ継続の姿勢が好感され、2021年末の20円60銭台からは4月下旬には27円80銭台まで上昇するなど、年初からの上昇率は一時30%以上に達しました。
しかし、その後は、ブラジルの最大貿易相手国である中国の上海での都市封鎖(ロックダウン)をきっかけとした中国経済に対する不透明感や米長期金利の上昇が意識されたことなどにより、ブラジル・レアルに対する調整圧力が強まり、上昇が頭打ちになっています。
今後の注目点として、10月2日に予定されているブラジル大統領選挙に注目が集まっています。2003年から2010年に大統領を務めた左派のルラ元大統領の返り咲きが有力視されていますが、現職のボルソナロ大統領も劣勢を挽回するため、低所得者層や貧困層などを対象とする社会保障支出の拡充に動いており、バラマキ財政を志向するポピュリズムが必要以上に増大しないかどうかに注目する必要があります。
その他、米国の金融政策も注目するポイントとなります。
すでに2021年3月から2022年8月までの間に累計で11.75%の利上げ(2.00%から13.75%)を実施しています。米国の利上げ加速が想定以上であれば、ブラジル中央銀行は更なる利上げを迫られることになり、景気を下押しする圧力が強まることから、今後の米国の金融政策は注視する必要があります。
また、中国の景気動向や鉄鉱石を中心とした資源価格の動向にも留意する必要があります。
ブラジル・レアルを取り巻く環境には、主に次のようなリスク要因があると考えられ、注視する必要があります。
- ブラジル政府の財政赤字および公的債務の高さ、健全化が急務の財政
- 大統領選の行方(ポピュリズム色を強める懸念)
一方で、以下に記したファンダメンタルズがブラジル・レアルを下支えすると考えられます。
- 政策金利の引き上げにより国内の景気は厳しい状況であるにも関わらず、ブラジル中央銀行は物価の安定が確認できるまでは金融引き締めを優先する姿勢を示していること。
- ブラジルは原油の生産量が世界9位(2021年)、鉄鉱石の生産量が世界2位(2019年)と資源大国であることで資源価格の上昇に関して恩恵を比較的受けやすいこと。