トルコ・リラを取り巻く環境(2021年2月)
トルコ・リラ円は2020年11月上旬に史上最安値となる12円割れ寸前まで下落後、反転に転じています。
きっかけは、エルドアン大統領が、突如、中央銀行総裁・財務相を刷新したことです。
中央銀行は新体制発足後の金融政策決定会合で計6.75%の大幅な利上げを行うなど、物価の安定を重視する姿勢が市場参加者に好感され、トルコ・リラは底堅い展開となりました。
2021年に入り、EUとの関係再構築に向けた動きや、外貨準備高の増加、国内預金をリラ建てからドル建てへ移す「ドル化」の動きが一服したことに加えて、2月18日の金融政策決定会合後に発表した声明文で、「物価上昇率が今後3年間で目標の5%まで低下するまで、金融政策を引き締めてディスインフレ(物価上昇率の鈍化)効果を生み出す」との文言が追加されたこともあり、2月22日12時現在、トルコ・リラ円は15円台を維持しています。
懸念材料の一つであった金融政策については大きく改善されましたが、引き続き、トルコ・リラの不安材料は山積しています。ロシア製ミサイル防衛システム「S400」に関する米国との軋轢、アゼルバイジャン・アルメニア紛争などの地政学リスクは依然として残っています。また、金融政策について、エルドアン大統領が、景気を冷やしかねない高金利をいつまで我慢できるのかも焦点になりそうです。
当面は上値が重い展開となる可能性がありますが、中長期的には、労働人口の増加による経済規模の拡大期待や欧州向け輸出拠点としての優位性(EUとの関税同盟、地理的な近さ、賃金の安さ)等の成長ポテンシャルがトルコ・リラを下支えすることが期待されます。
