(2024年7月17日更新)
人口世界一で期待が集まる インドの魅力と注目ポイント
米中覇権争いの中、第三極として独自路線を貫き、存在感を高めるインド。2023年、インドの人口は中国を抜いて世界一になりましたが、膨大な人口が生み出す豊富な労働力と消費力を糧に経済発展を続けるインドは、投資先としてあらためて注目を集めています。
中長期的な成長が期待できるインドの魅力と今後の注目ポイントについてご紹介いたします。
次の10年はインドの時代
今後10年の実質GDP成長率予想で世界第1位
IMFによるとインドは今後10年の実質GDP成長率で世界第1位となると予想されています。また、2027年には日本を抜き、世界第3位の経済大国になると予想されています。インドの人口ボーナス期は2051年まで続くと予想され、今後も長期にわたって豊富な労働力が経済成長を支えると期待されています。
過去10年間と今後10年間の実質GDP成長率 上位5カ国
2014年〜2023年
順位 |
国名 |
過去10年の
GDP成長率 |
1 |
アイルランド |
123.8% |
2 |
中国 |
78.5% |
3 |
インド |
76.8% |
4 |
トルコ |
60.8% |
5 |
インドネシア |
50.8% |
|
|
|
- |
米国 |
25.6% |
- |
日本 |
5.8% |
2024年〜2033年(予想)
順位 |
国名 |
過去10年の
GDP成長率 |
1 |
インド |
90.4% |
2 |
インドネシア |
63.7% |
3 |
中国 |
45.1% |
4 |
コスタリカ |
42.0% |
5 |
トルコ |
41.0% |
|
|
|
- |
米国 |
24.2% |
- |
日本 |
7.8% |
(出所) IMF 「World Economic Outlook Database」2024年4月版よりJTG証券作成。ランキングはOECD非加盟国は除く。
2023年と2027年の
GDPランキング上位5カ国
(単位 : 兆USD)
(出所)IMF 「World Economic Outlook Database」2024年4月版
インド・中国・日本の人口ボーナス期
(出所)国連「World Population Prospects」
デジタル化とプレミアム化
インドでは中間所得者層の増加とともに消費活動にも変化が見られます。
2012年のインドのインターネット利用者数は約1.4億人(総人口の約11%)でしたが、2022年のインターネット利用者数は約8.3億人(総人口の約58%)とされ、約10年間で5倍以上に増加しています。
また、所得が増えることによって、より高品質なもの、高価なものを求める消費行動(プレミアム化)も見られます。例えば、2022年は新車販売の約半分を高額なSUV(多目的車)が占めました。全体の販売台数も伸びており、2022年の新車販売台数は日本を抜いて世界第3位となるなど市場規模も拡大しています。一方でインドの乗用車普及率はまだ人口の約8%程度であり、伸びしろも大きいと言えます。
インドのインターネット利用者数
(出所)ITU(国際電気通信連合)IMFをもとにJTG証券作成。
海外企業の投資先としての人気の高さ
海外大手企業の投資先としてインドの人気は高まっています。
海外からインドへの直接投資額を見ると、2022年は、過去最高額となった2021年には及ばなかったものの、2019年以降は700億ドル以上の高水準で推移しています。
今後についても、米アップル社が2025年までに生産の25%をインドに移すために主要サプライヤーに対してインドでの生産を促したり、電気自動車(EV)大手のテスラがインド国内でのEV生産工場建設に関心を示したりするなど、新たな投資先や生産拠点の移転先として、引き続きインドは注目を集めています。また、国際協力銀行の調査によれば、海外事業展開を行っている日本の製造業企業の中期的に有望な事業展開先国として、インドが第1位となりました。これは、インドの高い経済成長期待、脱中国の流れ、インド政府によるインフラ整備の推進などが結果に反映されたものと考えられます。
海外からインドへの
直接投資額の推移
(出所)インド商工省
2023年度 海外事業展開を行っている日本製造業の
中期的な有望事業展開先国 ランキング
1 |
インド |
2 |
ベトナム |
3 |
中国 |
4 |
米国 |
5 |
インドネシア |
(出所)国際協力銀行 2023年12月公表
モディ政権の経済改革(モディノミクス)
モディ首相は、豪腕と清廉を売りにモディノミクスと呼ばれる経済政策を推進しています。短期的な成長だけではなく、持続可能な成長も志向する政策を実施することで、引き続き成長は加速していくものと期待されています。
主な経済政策
- 「メーク・イン・インディア (インドでモノづくりを)」 政策の継続
GDPに占める製造業の割合を15%から25%へ
- 道路、鉄道、農村開発など 1.4兆ドル規模のインフラ整備を実施
- 「デジタル・インディア」(デジタル技術や知識を活用した活気ある社会や経済の実現)の推進
- 海外企業誘致の促進(法人税引き下げ、州ごとに異なる税体系の統一、認定企業への補助金支給)
ヒンドゥー至上主義とカースト制度
ヒンドゥー至上主義とは、インド総人口の約80%を占めるヒンドゥー教徒に国家の運営上優先的な地位を認める政治思想です。インドは、元来、世俗国家であるにも関わらず、 モディ政権下ではヒンドゥー色の強い政策が次々と推し進められ、多様性が揺らぐ状況が生まれています。
とりわけ、イスラム教徒に対して弾圧を続けており、イスラム教徒が多いカシミール地方の自治はく奪は、ヒンドゥー至上主義が背景にあります。インドは民主国家ではありますが、このような宗教的少数派に対する差別や抑圧を行う強権の政治体制であることを理解しておく必要があります。
インドの経済成長の牽引役のひとつになっているのがIT産業ですが、その背景にはインドのカースト制度があります。優秀な若者たちがIT業界を志すのは、新しい業界ゆえにカーストの縛りがなく、中下層カーストの人々にとって固定化した社会の階段を駆け上がるチャンスがあるからです。
1949年で廃止となったカースト制度は、現在でも、特に地方に住む人々の間に根強く残っており、職業の固定化はインド全体の経済成長を阻害する要因のひとつとなっています。
インド政府などの施策により、カースト制度は都市部では風化しつつありますが、カースト制度は約3,500年にわたりインドで続いてきた制度であり、完全な消滅にまだ時間を要すると思われます。
インドの各宗教の割合
(出所)2011年インド国勢調査
原油の80%以上を海外から購入
インドは原油価格の影響を受けやすい経済構造を有しています。インドは世界第3位の石油輸入国であり、必要な原油の80%以上を海外に依存しています。原油高は、インフレ加速、貿易赤字などを通じてインド経済にマイナス圧力になるため、原油価格の動向には注意する必要があります。
インド政府は原油高対策として、割安なロシア産原油の輸入を増やすことで、エネルギー価格の高騰による経済への悪影響をある程度防ぐことに成功していますが、中長期的には、再生可能エネルギーの拡大やエネルギー効率の改善などを通じて原油の輸入依存度を引き下げる取組みを推進しています。
モディ政権は3期目へ突入
2024年6月に行われたインドの総選挙では、インド人民党を中心とする与党連合が過半数を維持し、6月9日、モディ首相の3期目の政権が発足しました。政権を握る見通しです。
政権発足後に発表される国家予算案に注目が集まっていましたが、7月23日に公表された内容はモディ政権の連立相手である地域政党に配慮して低所得者向けの減税を盛り込むなど、それぞれの地盤への利益誘導が目立った一方で、今までの財政健全化路線を維持しつつ、長期的な経済成長戦略を踏まえインフラ投資を継続する方針が確認されました。
前年度当初予算比で11%増の税収拡大を背景に、2月の暫定予算案では2024/25年度の財政赤字対GDP比の目標値を5.1%としていましたが、今回の予算案ではより低い4.9%に設定し、財政規律を重視する姿勢を示しました。中期的財政健全化目標(2025/26年度までに同比率を4.5%に縮小させる)に向けて確実に前進した格好となり、近い将来に国債格付けが引き上げられ、国の信用力が高まることが期待されています。
「インドの魅力と注目ポイント」の内容は作成日(2024年7月30日)時点のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
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- 主要な格付会社により「投機的要素が強い」とされる格付(投資不適格格付)がなされている債券(投資不適格格付債券)については、当該発行体または本債券の償還金及び利子の支払いを保証している者の信用状況の悪化等により、償還金や利子の支払いが滞る、
支払不能が生じるリスクの程度が、投資適格格付等のより上位の格付けを付与された債券と比べより高いと言えます。
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新興国への投資のリスクについて
新興国は、先進国と比べて経済状況、社会制度や基盤が脆弱であると考えられ、政治・経済および社会情勢が著しく変化する可能性があります。
想定される主な変化としては、主に以下のようなものが挙げられます。
- 政治体制の変化
- 取引慣行や規制、税制等の社会制度の変更
- 社会不安の高まり
- 他国との外交関係の悪化
- 海外からの投資に対する規制
- 海外との資金移動の規制
さらに、新興国は、先進国と比べて法制度や社会基盤が未整備あるいは未成熟で、情報開示の制度や習慣等が異なる場合があります。
その結果、投資家の権利が迅速かつ公正に実現されず、投資資金の回収が困難になる場合や、投資判断に当たって正確な情報を十分に得られない可能性があります。
したがって、一般的に、新興国への投資については、先進国への投資に比べて各種リスクの程度がより高いと言えます。
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