

更新日 2025/7/24
2025年7月17日時点で、米国の長期金利の指標である10年国債利回りは4.4%台と高水準を維持しています。こうした金利の高止まりにより、企業にとって資金調達の負担は増しているものの、日本企業による米ドル建て債券(いわゆる「逆サムライ債」)の発行が相次いでいます。特に2025年7月には、ソフトバンク、NTTファイナンス、日産自動車などが立て続けに起債を発表しており、発行件数・規模ともに近年では目立った動きとなっています[表①]。
このような動きにはさまざまな要因がありますが、その一つとして、日本銀行による利上げの可能性が意識される中、円建てでの資金調達コストが上昇傾向にあることが挙げられます。また、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和を継続するとの見通しのもと、将来的に円高が進めば、債券の償還時に円換算での返済負担が軽くなるという側面もあります。
さらに、日本企業は債券の発行頻度が少ないことから、海外の投資家の間では、日本企業の債券を保有したいというニーズが高まっています。こうした需要を背景に、日本企業はより有利な条件で資金調達を行うため、規模の大きい海外市場での債券発行へとシフトしているのです。
※各社HP掲載の社債情報・プレスリリース等をもとにJTG証券作成。
最近発行されている米ドル建て債券の多くが利率5%超と好水準にあり、投資対象として注目を集めています。なかでも、ある日本企業が2025年7月に発行した10年債のなかには利率が8%を超えるものもあり、一見すると非常に魅力的に映ります。 しかし、こうした高利率の裏には必ずリスクが存在します。
実際、2025年7月17日時点で、同社の社債は大手格付会社から投資不適格級の格付けを付与されており、債務不履行(デフォルト)リスクが相対的に高いと見なされています。なお、格付けとは、あくまで「信用度の相対的な位置づけ」を示すものであり、民間の格付け会社による一つの見解に過ぎません。「投機的格付け」の債券に投資してはいけないという意味ではありません。
好利回りの債券には高いリターンも期待できるなどメリットがありますが、利率の高さのみに目を奪われるのではなく、発行体の財務状況や市場環境を総合的に理解したうえで、慎重な投資判断が求められます。発行体の経営状況によっては、元本や利息の支払いが滞る可能性もあるため、リスクを十分に認識しておく必要があります。利率の高さに惑わされず、リスクとリターンのバランスを冷静に見極める姿勢が重要です。
掲載の条件は 2025/07/31 現在のものです。利率・利回りは、すべて税引前/現地通貨ベースです。また、利回りは複利で表示しております。
※1 劣後社債の場合は初回コール日までの固定利率を記載しています。初回コール日以降の利率は外国証券情報でご確認ください。「年利回り」は米ドル建てベース・税引前・複利を記載しています。劣後社債の場合は初回コール日に繰上償還される前提で算出したものです。
※2 劣後社債、永久劣後債の場合は初回コール日までの期間です(初回コール日での償還を保証するものではありません)。
銘柄名 | 年利回り※1 | 残存年数※2 | ポイント | 高リスク |
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日産自動車 米ドル建普通社債 8.125% 2035年7月17日満期 | 約6.728% | 約10年0ヶ月 | 毎年8%台の好利率を享受できる点は魅力ですが、大手格付会社は投資不適格格付を付与しています。高いリスクを許容してでも高いリターンを追求される投資家にご検討いただける債券です。 | |
ソフトバンクグループ 7.5% 2035年7月10日満期 米ドル建普通社債 | 約6.587% | 約10年0ヶ月 | 大手格付会社は、保有資産に占める非上場のAI関連企業の比率が高い点をリスクと見なし、同社債に投資不適格級の格付けを付与しています。高い収益性を重視する投資家にとっては選択肢の一つとなり得る債券です。 | |
ソフトバンク 5.332% 2035年7月9日満期 米ドル建普通社債 | 約5.145% | 約10年0ヶ月 | 親会社のソフトバンクGとは異なり、通信事業を中心とした安定的なキャッシュフローを背景に、大手格付会社からは信用力が一定程度評価されています。年5%台の利率を享受できる債券です。 | |
ソフトバンク 4.699% 2030年7月9日満期 米ドル建普通社債 | 約4.237% | 約5年0ヶ月 | 5年以上の長期投資を避けたい方、馴染みのある企業の米ドル建て債券に投資したい方に適した債券です。 | |
NTTファイナンス 米ドル建普通社債 4.567% 2027年7月16日満期 | 約3.582% | 約2年0ヶ月 | 大手格付会社からA格の信用格付けを付与されています。リスクを抑えながら一定の利回りを享受したい投資家に適した債券です。 | |
第一生命保険株式会社 米ドル建永久劣後特約付社債(利払繰延条項付) 6.2% | 約5.388% | 約9年6ヶ月 | 本社債の証券格付はA格を付与されていますが、永久劣後特約が付されているため、償還期限がない、弁済順位が普通社債よりも劣後するなど、特有のリスクがあります。これらのリスクを受け入れられる投資家にとっては、魅力的な投資対象となり得ます。 |
債券は、発行体の信用度に応じて格付会社が格付を付与しています。格付会社ムーディーズではBaa格以上、同S&PではBBB格以上の債券は「投資適格債」、逆にこの格付を下回る債券は「投資不適格債券」と呼ばれており、投資不適格債券や、劣後債、AT1債は、リスクが高い商品とされています。このような高リスクの銘柄をお取引なさる際は、その内容を十分にご理解いただくとともに、ご自身の投資目的やリスク許容度に照らして適当な商品であることをご確認の上、投資をご検討ください。
上記のラインナップでは、高リスクの商品に マークを付けています。
企業が発行する社債の一種で、発行体の倒産・清算時における元利金の支払順位(債務弁済順位)が一般債務よりも低く、リスクが高い債券です。劣後債の中には償還期限の定めがないものもあり、「永久劣後債」と呼ばれます。
株式と債券の中間の性質を持った証券のひとつで、金融機関が破綻した際の元利金の支払順位(債務弁済順位)が一般債務よりも低く、リスクが高い債券です。原則として償還期限の定めがない永久債として発行されます。発行体の自己資本比率が一定の水準を下回った場合や監督当局の決定などにより、強制的に元本の一部または全部が削減されたり株式に転換されたりする特性があります。従って、投資に関する相応の知識・経験、金融資産及びリスク許容度と、高いリスクを取ってでもより高い利回りを追求される投資目的をお持ちのお客様に適合する金融商品となります。
一般的に投資適格債券と比較して利回りが高い一方で、価格変動が大きく、また、信用リスクをはじめとした各種リスクが高い商品です。
投資不適格債券への投資は、次の要件を全て充足されているお客さまが適合すると考えられます。
免責事項
お取引にあたってのご留意事項
外貨建て債券のリスクについて
金融商品市場における相場その他の指標にかかる変動などにより損失が生ずるおそれがあります。
債券の発行者または元利金の支払の保証者の業務または財産の状況の変化などによって損失が生ずるおそれがあります。
債券の発行者等または当該通貨等の帰属する国や地域の政治および経済状況の変化、法令・規制の変更などによって損失が生じるおそれがあります。
お取引をされる際は、必ず契約締結前交付書面等をよくお読みいただき、ご自身の判断でお申し込みください。
無登録格付について
ホームページ上で使用されている格付けについて、信用格付付与者である「ムーディーズ・レーティングス(Moody's)」、「S&Pグローバル・レーティング(S&P)」 、および「フィッチ・レーティングス(Fitch)」 は金融商品取引法第66条の27の登録を受けておりません。無登録格付けに関する留意点につきましては、無登録格付に関する説明書をご覧下さい。