夏の外国債券祭り! 夏の外国債券祭り!
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JTG証券

メガバンク発行の米ドル建債券ってどうなの?

外国債券の購入を検討する際、発行体が馴染みのある企業であれば、より親しみやすく感じられるのではないでしょうか。

今回は、メガバンクを傘下に持つ大手金融グループが発行する米ドル建て債券についてご紹介します。

最近では、従来の普通社債に加え、「ハイブリッド証券」と呼ばれる債券も発行されるようになっています。この記事では、その特徴や魅力、投資する際の注意点についても詳しく解説します。

直近の業績と世界の主要金融機関との比較

三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJFG)、三井住友フィナンシャルグループ(以下、三井住友FG)、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)の3メガバンクグループの2025年3月期における純利益の合計額は、前期比25%増の3兆9,263億円となり、2年連続で過去最高を更新しました。これは、日銀の利上げに伴う金利上昇を追い風に、利ざやの改善や企業活動の活発化による貸出残高の増加が業績を押し上げたためです。

一方、世界の主要金融機関と比べると、日本のメガバンクの利益水準は依然として限定的です。 米欧の大手金融機関が、M&A助言やトレーディング、資産運用などによる非金利収益を多角的に確保しているのに対し、日本のメガバンクは依然として、金利収益(貸出などの伝統的な融資業務)への依存度が高く、収益構造の多様化が課題となっています。

例えば、三菱UFJFGの2025年3月期における業務粗利益は約4兆8,193億円で、そのうち資金利益(≒金利収益)は約2兆8,765億円と、全体の約60%を占めています。 そのため、ROE(自己資本利益率)では、米銀最大手のJPモルガン・チェースや本社をイギリスに置く国際金融グループHSBCと比べて見劣りしています[表1]。

■表1:2024年度の業績

会社名 営業収益 当期純利益 ROE
三菱UFJフィナンシャル・グループ 4兆8,193億円 1兆8,629億円 9.9%
三井住友フィナンシャルグループ 4兆1,267億円 1兆1,780億円 10.8%
みずほフィナンシャルグループ 2兆9,656億円 8,854億円 9.4%
JPモルガン・チェース(米) 26兆6,334億円 8兆7,706億円 17.2%
HSBCホールディングス(英) 9兆5,488億円 3兆6,248億円 14.6%
BNPパリバ(仏) 7兆8,129億円 1兆8,700億円 9.9%

※各社の決算資料をもとにJTG証券が作成。

※日本の金融機関は3月期決算。欧米の金融機関は12月期決算。

※1米ドル=145円、1ユーロ=160円で円換算。

※営業収益は日本の3行に関しては連結業務粗利益に相当。

※日本の金融機関のROEについて、三菱UFJ FGのROEはMUFG定義、三井住友 FGは株主資本ベース、みずほ FGは連結ROE。

日本のメガバンクは、自らの課題や弱みを認識しており、手数料ビジネスの拡大やグローバル展開の強化、デジタル・DXの加速に取り組むことで今後の成長余地があるといえるでしょう。

債券の発行を続けている理由とは?

メガバンクが債券を発行し続けているのには、いくつかの理由があります。

まず、資金調達の多様化が挙げられます。
銀行は主に預金を原資に貸し出しを行いますが、預金は流動性が高く、必ずしも安定した資金とは言えません。債券を発行することで、市場から直接資金を調達し、長期的かつ安定的な資金を確保することが可能になります。特に、グローバルな資金調達戦略の一環として、米ドル建て債の発行が活用されており、より幅広い投資家層から資金を集める手段となっています。

次に、自己資本規制への対応があります。三菱UFJFG、三井住友FG、みずほFGの3社は、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)に指定されています。

2008年のリーマン・ブラザーズの破綻は、世界的な金融危機を引き起こし、第二次世界大戦以来最悪の大不況をもたらしました。また、国民から徴収された多額の血税が公的資金として金融機関に注入されるなど、一般国民に負担を強いる結果となりました。

その教訓から、国際的に業務を展開している大手銀行が経営危機や破綻に陥ると、大きな影響を及ぼす可能性があると認識されるようになりました。そのため、こうした銀行には一定割合以上の自己資本比率を維持することが義務付けられ、「バーゼルV」と呼ばれる国際的な自己資本規制の枠組みが設けられました。

バーゼルVは、日本を含む世界各国で2013年から段階的に実施されており、最終的には2028年初めに完全実施される予定です。こうした経緯を踏まえ、日本のメガバンクも資本の質と量の向上に積極的に取り組んできました[表2]。

■表2:Tier1比率・普通株式等Tier1比率

会社名 Tier1比率 普通株式等Tier1比率
2013年3月 2025年3月 2013年3月 2025年3月
三菱UFJフィナンシャル・グループ 12.7% 16.6% 11.7% 14.1%
三井住友フィナンシャルグループ 9.3% 14.2% 10.9% 12.4%
みずほフィナンシャルグループ 11.0% 15.6% 8.1% 13.2%

※各社HP「バーゼルV関連資料」をもとにJTG証券作成。

バーゼルVにおいて、銀行の規制自己資本は以下のように区分されます。

  • 普通株式等Tier1(普通株、内部留保など)
  • その他Tier1(優先株、優先出資証券、永久劣後債など)
  • Tier2(新型劣後債、劣後ローン、一般貸倒引当金など)

図① 銀行の資本イメージ

銀行の資本イメージ

それぞれについて必要最低水準の達成が求められるなど、自己資本比率規制は厳格化されています。

シニア債と呼ばれる普通債は資金調達の多様化を図るために毎年発行されていますが、普通債はバーゼルVの自己資本規制には対応できません[図1]。そこで、日本のメガバンクは自己資本の一部として計上可能なAT1債(Additional Tier 1債券)やTier2証券を発行しています。

なお、AT1債とバーゼルV適格Tier2証券の違いを簡単に説明すると、AT1債は「生き残るための資本(Going Concern)」であり、Tier2債は「安全に破綻するための資本(Gone Concern)」と位置づけられています。AT1債は銀行が経営危機に陥る前に損失を吸収することで、金融機関の継続的な運営を支える資本として機能します。一方、Tier2債は、破綻が避けられない状況において債務整理や清算を円滑に進めるための資本として位置づけられており、破綻後の損失吸収を担います。

なお、AT1債については、過去に東京証券取引所の様々な資産形成法も紹介するサイト「東証マネ部!」にて詳細をご紹介していますのでよろしければこちらもご覧ください。

東証マネ部!「AT1債とは何か、ご存知ですか?(2023年5月寄稿)」

当社取扱のメガバンク発行の米ドル建て債券と投資する際の注意点について

当社HPでは本ページ作成日時点(2025年6月16日)で、三菱UFJFG、三井住友FG、みずほFGが発行する米ドル建て債券を16銘柄掲載しています。ここでは投資家の関心が高いと思われる銘柄を紹介します。

一般的に高い利回りを享受したい場合には、同じ発行体であっても、劣後債やAT1債と呼ばれる債券の方が、普通社債よりもリスクが高いため、相対的に利回りが高く設定される傾向にあります。

これらの債券は、発行体が経営危機に陥った際には発行体の財務健全性に貢献します。一方で、投資家にとっては元本毀損リスクを伴うため、投資判断にあたっては、信用リスクや弁済順位の違いを十分に理解することが重要です(図2)。

投資家は、自身の資産状況や運用方針を踏まえ、元本毀損の可能性を受け入れられるかどうかを慎重に判断する必要があります。リスクを受け入れられるのであれば、より高い利回りを狙える投資先として劣後債やAT1債も検討対象の一つとなりますし、安定性を重視する投資家には、普通社債の方が適していると言えるでしょう。

図② 金融商品とリスク・利回りの関係

金融商品とリスク・利回りの関係

弁済順位:発行体が破綻した場合に残余財産を弁済する優先順位

※上記の内容は資本性証券の一般的な特性を単純化して例示したものであり、必ずしも各カテゴリーの全ての証券が上記の通りとは限りません。

JTG証券担当者が厳選するメガバンク発行の米ドル建て債券6銘柄

掲載の条件は 2025/08/02 現在のものです。

利率・利回りは、すべて税引前/現地通貨ベースです。また、利回りは複利で表示しております。

※1 劣後社債の場合は初回コール日までの固定利率を記載しています。初回コール日以降の利率は外国証券情報でご確認ください。「年利回り」は米ドル建てベース・税引前・複利を記載しています。劣後社債の場合は初回コール日に 繰上償還される前提で算出したものです。

※2 劣後社債、永久劣後債の場合は初回コール日までの期間です(初回コール日での償還を保証するものではありません)。

銘柄名年利回り※1残存年数※2ポイント高リスク

三菱UFJフィナンシャル・グループ 5.574% 2036年1月16日満期 米ドル建普通社債

4.829%約10年6ヶ月本社債は2025年1月に発行された普通社債で、残存期間が長く、比較的長期にわたり、毎年5%台の利率を享受できる点が魅力です。

三菱UFJフィナンシャル・グループ 4.153% 2039年3月7日満期 米ドル建社債

4.641%約13年7ヶ月当社が取扱っている16銘柄の中で、2025年1月以降の販売件数が当社で最も多い債券です。額面1万ドルから購入できるため、初めてのドル建て投資でも安心して始められます。

みずほフィナンシャルグループ 米ドル建普通社債 5.748% 2034年7月6日満期

4.303%約9年0ヶ月毎年5%台後半の利率が得られるうえ、A格の信用格付けを有する債券であるため、信用度が比較的高く、リスクを抑えながら利回りを狙いたい投資家に検討いただきたい商品です。

三菱UFJフィナンシャル・グループ 3.741% 2029年3月7日満期 米ドル建社債

3.615%約3年7ヶ月残存期間が短いため、5年以上の長期投資を避けたい方や、米ドル建て債券への投資において価格変動リスクを低減させたい投資家に適した商品です。

【新型劣後社債】三井住友FG 米ドル建無担保社債 5.836%(劣後特約及び実質破綻時債務免除特約付)2044年7月9日満期

5.387%約19年0ヶ月ある程度のリスクは許容できるものの、過度なリスクは避けたいという投資家にとって、本債券はバランスの取れた選択肢となります(ただし、普通社債と比べると信用格付けは1段階低くなっています)。額面1万ドルから購入可能である点も魅力のひとつです。

三井住友フィナンシャル・グループ 米ドル建任意償還条項付無担保永久社債 6.6%(債務免除特約および劣後特約付)

5.829%約8年11ヶ月本債券はAT1債であるため、普通社債と比べると比べてリスクが高く、信用格付も普通社債より4〜5段階低くなっています。高いリスクを許容してでも高いリターンを追求される投資家の方におすすめです。

お買付にあたって

債券は、発行体の信用度に応じて格付会社が格付を付与しています。格付会社ムーディーズではBaa格以上、同S&PではBBB格以上の債券は「投資適格債」、逆にこの格付を下回る債券は「投資不適格債券」と呼ばれており、投資不適格債券や、劣後債、AT1債は、リスクが高い商品とされています。このような高リスクの銘柄をお取引なさる際は、その内容を十分にご理解いただくとともに、ご自身の投資目的やリスク許容度に照らして適当な商品であることをご確認の上、投資をご検討ください。

上記のラインナップでは、高リスクの商品に マークを付けています。

  • 劣後債

    企業が発行する社債の一種で、発行体の倒産・清算時における元利金の支払順位(債務弁済順位)が一般債務よりも低く、リスクが高い債券です。劣後債の中には償還期限の定めがないものもあり、「永久劣後債」と呼ばれます。

  • AT1債

    株式と債券の中間の性質を持った証券のひとつで、金融機関が破綻した際の元利金の支払順位(債務弁済順位)が一般債務よりも低く、リスクが高い債券です。原則として償還期限の定めがない永久債として発行されます。発行体の自己資本比率が一定の水準を下回った場合や監督当局の決定などにより、強制的に元本の一部または全部が削減されたり株式に転換されたりする特性があります。従って、投資に関する相応の知識・経験、金融資産及びリスク許容度と、高いリスクを取ってでもより高い利回りを追求される投資目的をお持ちのお客様に適合する金融商品となります。

  • 投資不適格債券

    一般的に投資適格債券と比較して利回りが高い一方で、価格変動が大きく、また、信用リスクをはじめとした各種リスクが高い商品です。
    投資不適格債券への投資は、次の要件を全て充足されているお客さまが適合すると考えられます。

    • 高い信用リスクを許容して、より高い利回りを追及される投資意向・目的(収益重視)をお持ちのお客さま
    • 仮に当該債券の発行者が倒産等に至り、投資元本の全部を棄損しても将来を含めた生活等に影響がない資金の範囲で投資をされるお客さま
    • 一般的な債券の投資リスクに加えて、投資不適格債の投資リスクを正しく理解することができる債券投資の知識とご経験をお持ちのお客さま

 免責事項

  • 本ページは情報提供を目的として当社が作成したものです。本資料は投資勧誘、売買の推奨等を目的とするものではありません。
  • 本ページは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されたものですが、当社はその正確性、完全性、適時性を保証するものではありません。
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  • 本ページの内容は作成日時点(2025年6月16日)のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
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出所:各国中央銀行
※2025/08/01 8時50分時点

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